において要求されている
コアツールの1つで、製造工程において品質保証及び工程の管理・改善のために統計的手法を用いて管理する手法です。
1.SPC(統計工程性能分析)の目的
管理図、ヒストグラム等のグラフや工程能力指数(Process Capability Index)CpCpk等の統計量を分析する
ことで、工程の安定性や管理状態を把握し、品質の安定化を図ることを目的とします。
2.バラツキ
(1)バラツキとは
全データが同じであればバラツキはゼロとなり、データ間の差異が大きければ大きいほどばらつきも大きく
なる。バラツキを表す統計量として、標準平方和、分散、標準偏差、範囲などがあります。
(2)バラツキが発生する要因
バラツキには、製品のバラツキと測定上のバラツキがあり、下記の要因が有ります。
1)製造上のバラツキ
製造条件のバラツキ(温度、濃度、時間など)
原材料のバラツキ
作業ミスによるバラツキ
機械故障によるバラツキ
2)検査でのバラツキ
測定誤差によるバラツキ
測定者の違い
検査機の故障によるバラツキ
(3)改善すべきバラツキと許容されるバラツキ
1)改善すべきバラツキ
異常原因によるバラツキで、工程の管理上避けなければならないバラツキです。
作業ミスによるバラツキ
機械故障によるバラツキ
異常原材料使用によるバラツキ など
2)許容されるバラツキ
偶発原因によるバラツキで、生産の中で認められているバラツキです。
製造条件のバラツキ
(温度、濃度、時間など)
原材料のバラツキ
測定誤差によるバラツキ
(4)バラツキをあらわす方法
1)標準偏差
平準偏差を算出する方法として次の2つの方法があります。
a.JIS Z 8101-1:1999 第1部 確率及び一般統計用語

b.JIS Z9021 シューハート管理図

2)分布
a.計量値の分布
計量値とは、製品の寸法や重量、加工速度や時間など
連続量として測定できるもの。
計量値の分布は、ヒストグラムで表すことが出来き、一般的には正規分布で表される。
b.計数値の分布
計数値とは、製品の中の欠点数など、
整数型の離散量でしか測定できないもの。
計数値の分布は、二項分布とポアソン分布で表される。
・二項分布とは
無限の母集団からサンプリングしたときに、欠点が発生する確率をあらわしたもの。
例:白玉900個、赤玉100個の計1000個の中から、20個サンプリングして、赤玉が入って
いる確立。
・ポアソン分布
製品の欠点数、工場の事故件数など、母集団が限定されている場合の欠点が発生する確率をあらわした
もの。
3.工程能力指数
工程能力指数とは、ある工程の持つ工程能力を定量的に評価する指標の一つであり、工程能力は工程が管理状態で
かつ、安定した状態で予測可能な場合のみ評価できます。SPC管理では、管理図と工程能力指数を組み合わせて
工程能力を向上させます。
(1)Cp
Cpとは、
バラツキの範囲がスペックの範囲に対してどの程度のレベルかを数値化した指数です。工程能力
指数Cpを求めるためにはバラツキを標準偏差(σ)として算出する必要が有ります。標準偏差(σ)は、次の
様な確率分布を示します。
・平均値±σの中に入る確率が68.3%
・平均値±2σの中に入る確率が95.4%
・平均値±3σの中に入る確率が99.7%
・平均値±4σの中に入る確率が99.994%
つまり、スペックの範囲に対して標準偏差(σ)が小さいほど工程能力指数Cpは小さくなり、下記の計算式で
算出します。
(2)Cpk
Cpがばらつきのレベルを見るだけに対して、Cpkは、偏りを加味することで
スペックインする確率を
示したものであるため、工程の信頼度はCpkで判断します。Cpkは、下記の計算式で算出します。

工程能力指数の判断基準は、下記の通りとなります。
・Cpk<1 工程能力が不足。早急に改善を要する。
・1<Cpk<1.33 工程能力はあるが、改善必要。
・1.33<Cpk<1.67 工程能力は十分。現状維持。
・1.67<Cpk 工程能力は十分。検査頻度の削減可能。
※ 目標は、1.33を目指すべき。
4.データのサンプリング
(1)パラメータの選択
測定データについて、データの性質や重要度から次の3種類に分類します。
1)キーパラメータ:目標とする物性値。
出荷データ:寸法、重量、固形分など
工程データ:厚み、塗布量、水分量など
2)コントロールパラメータ:制御因子
温度、PH、添加量など
3)モニター項目:解析などに参考にするデータ
気温、湿度など
(2)サンプリング頻度
データのバラツキや技術的見解を基にサンプリング頻度、測定数などを決めます。
(3)測定方法・測定機器の管理など
データの測定方法や測定機器の選定、測定機器の整備などを決めます。なお、測定精度が満足されている
状態か判断するための方法として、MSAがあります。
(4)記録方法
データ入力方式などを決める。エクセルなどを使用して、直ぐに管理図を作成して、異常の判断が出来る
ようにしておきます。
(5)QC工程表
サンプリング頻度や測定方法、異常時の責任者をQC工程表に記載します。
5.SPC管理基準の策定
SPC管理を適切に運営するために、SPC管理基準などのルールを設定しておく必要があります。
(1)管理値計算の定義設定
一般的には1年間のデータをサンプリングして及び計算して、見直しを行います。平均値、偏差の計算方法
も定義しておく必要が有ります。
(2)変更管理
条件変更、設備改善や材料の変更などに伴い管理値の変更が必要となる場合が有ります。予めルールを決め
ておく必要があります。
(3)OOCの定義
OOC(Out Of Control)とは、異常を示します。SPC管理では、
異常の定義を行っておく必要が有り
ます。異常の定義として、新JISでは下記の8通りがあります。工程の特性や技術的見解を基に対象の工程
にあった異常を定義する必要が有ります。管理限界超えは必須として必要と考えられる
傾向異常を設定すると
良いでしょう。また、OOCは異常のレベルに合わせて3水準ほど決めておく方が業務上の負荷が少なくなり
ます。
1.
管理限界超え:管理限界線を越えている。
2.連:連続する9点が中心値のいずれか片側にある場合。
3.上昇・下降:連続6点以上の上昇・下降の傾向が現れる場合。
4.交互増減:連続する14点が交互に増減している場合。
5.2シグマ外:連続する3点中,2点が2シグマより外にある場合。
6.1シグマ外:連続する5点中,4点が1シグマより外にある場合。
7.中心化傾向:連続する15点が1シグマより内側にある場合。
8.連続1シグマ外:連続する8点が1シグマより外側にある場合。
(4)MRBの設定
MRB(Material Review Board)とは、
異常品の処置方法を示します。SPC管理では、OOCが発生し
た場合に異常品を識別し、適切な処理をする必要が有ります。予めMRBの設定をしておきルールに沿って
処置を行います。ポイントは、OOCのレベルに合わせて、現場責任者で対応可能なものや各部署の責任者に
よる協議により判断するものなど重大性に合わせておくことが重要です。
(5)RFCの設定
RFC(Response Flow Checklist)とは、
異常の対応を示します。MRBが製品又は仕掛品の処置方法に
対しRFCは工程(設備)の処置方法となります。異常が発生した場合に、管理者やエンジニアが全てをフォ
ローするのは現実的ではありません。発生頻度の高い異常について予めRFCを設定しておくことで現場レベ
ルで適切な対応が可能となり、異常品発生の抑制につながります。