標準原価は、統計的、科学的手法で設定した達成目標となるべき規範の原価です。価格や需要の変化など偶発的な影響をなくすことで、
現場管理者が公平に評価されることが可能となります。
1.標準原価計算の手続き方法
1)原価標準の設定と指示
※原価標準とは、製品単価当たりの製造に必要な原価
2)標準原価の計算
※標準原価は、原価標準に”実際の生産”を加味して計算されます。
3)標準原価と実際原価との比較による標準原価差額の計算
4)標準原価差額の差異分析
5)原価報告
2.原価標準の設定
原価標準の構成する価格、能率および操業度に関する基礎水準を設定します。
1)価格水準:材料費、労務費および経費の価格について予算価格を決めておきます。
2)能率水準:標準とされる能率を決めておきます。
※QC工程表などにも反映させておくとよいでしょう。
3)操業水準:予算生産量により影響されます。予算生産量をもとに操業度が求められます。
3.標準原価計算
標準原価の計算方法には、様々な方法が有りますが、代表的なものに標準原価計算を複式簿記に結合させ、常時
継続的に計算を行う標準原価計算制度があります。更に、どの計算段階で複式簿記に組入れるかによって、次の
2種類に分けることが出来ます。
1)パーシャルプラン
実際生産量に原価標準を乗じて標準原価を計算し、複式簿記に組入れる方法で、事務作業の負担は少ない
が期末まで標準原価が確定しないため差異の把握が遅くなる欠点があります。少品種多量生産に適用され
ます。
2)シングルプラン
原価財の消費について標準原価を計算し、複式簿記に組込む方法です。原価財の投入時において標準投入
額と実際投入額により差額が計算されるため差異の把握が直ぐに分かりますが、事務処理負担が大きい欠
点があります。小ロット多品種の生産品に適用されます。
4.差異分析の方法
標準原価と実際原価の差異を分析することで、管理不能な偶発的な影響か管理すべき原因であるのか区別する必要
が有り、管理すべき原因である場合は、対応策を検討する必要が有ります。
(1)直接材料費
1)価格差異
(実際材料単価ー標準材料単価)×実際材料消費量
2)数量差異
(実際材料使用量ー標準材料消費量)×標準材料単価
※価格差異は、管理不能な場合が多いが消費量は管理可能な場合が多い。
(2)直接労務費
1)労働賃率差異
(実際賃率ー標準賃率)×実際直接作業時間
2)労働時間差異
(実際直接作業時間ー標準直接作業時間)×標準賃率
(3)製造間接費
1)予算差異
実際製造間接費用ー実際の直接作業時間に伴う製造間接費予算
※変動費用を実際の作業時間に修正を行います。
例:固定費1,000千円+変動費1,000円/時間×1,000時間=2,000千円
実績 2,100千円ー2,000千円=100千円の予算差異
2)操業度差異
(正常作業時間ー実際作業時間)×固定費率
※固定費は予算の作業時間に見合って配賦されます。
3)能率差異
(実際作業時間ー標準作業時間)×標準配賦率
※生産量に対して能率が悪かった(良かった)ために発生した製造間接費。管理可能な差異
5.標準原価計算の事例
下記に原価計算の事例を紹介します。
(1)原価標準
A社は天丼と牛丼だけを製造している製造業を営んでいます。
原価標準は次の通りとなっています。
(2)標準原価
×月の天丼と牛丼の生産は、販売実績から次の生産量となっています。生産量から標準原価を計算します。
天丼:550杯、牛丼:2000杯を生産

販売計画が、標準としている製造量を下回ったため、目標とする原価標準より高い標準原価となっています。
参考図書 原価計算(六訂版)岡本清 著 国元書房