TOC理論
TOC(制約)理論とは、イスラエルの物理学者ゴールドラッド博士が開発したシステムレベルのマネジメント哲学です。もともとは、生産工程の改善を図るツールであったが、思考プロセス、プロジェクト管理などにも応用される様になり、現在はマネジメントの考え方の一つとなっています。
1.TOC理論の基本的な考え方。
企業の目標(ゴール)を、利益を出し続けることと考え、利益を出し続けるためにはどうすれば良いかを考える
ことを基本としています。
(1)制約条件
制約とは、必要条件やゴール達成を妨げ、遅らせるものです。
例:5つの輪で出来た鎖があるとする。鎖の強度は一番弱い鎖の強度で決まる。つまり一番弱い輪が制約
条件(ボトルネック)となる。従って、鎖の強度を上げるため、4つの輪を太くしても残りの1個の
輪が同じであれば強度は変わらない。
(2)制約理論とは
制約条件に集中して改善を図りシステム全体の向上を図る考え方です。制約は物理的制約とポリシー制約が
あります。特にポリシー制約は、個人的な考え方を含む制約であるため、容易に変えることは困難であり、
かつ、重要とされています。
(3)部分最適と全体最適
部分最適とは、システムを分割して、それぞれのパーツごとに最適化を図ることにより、結果としてシステム
全体のパフォーマンスは悪化してしまうことを言います。対して、全体最適とは、明確な目標達成に向けて、
全ての部分の働きを調整する事で、システム全体のパフォーマンスを向上させることを言います。
2.TOC理論の種類
TOCによる経営革新ツールとして、次のようなものがあります。
1)思考プロセス
組織のゴール(目的)に向かって「変えるべきもの」明確にし、「どの様なものに変えるべきか」、
「どのように変えるか」を明確にする方法です。
2)DBR(ドラム・バッファー・ロープ)
「工場の生産性はボトルネック工程の能力以上には絶対に向上しない」という至極当たり前の原理を基に、
工場全体をネック工程に同期させる生産を行う方法です。
3)クリティカルチェーン
人間の行動特性とアルゴリズムに目を向け、全体最適化の観点から開発されたプロジェクト管理手法です。
4)スループット会計
製造業における、時間当たり利益をマネジメントする方法論です。従来のヒト・モノ・カネといった積み
上げ形の経営ではなく、有限な「時間」の概念を取り込んで利益を企画する方法です。
3.思考プロセスとしてのTOC理論
TOC理論における思考プロセスは、次の3ステップに基づいて行われる。1.何を変えるか?2.何に変えるか?
3.どの様に変えるか?の3つである。
1)現状問題構造ツリー:何を変えるか?に対応。
好ましくない結果(UDE) を挙げ、それらの因果関係を見つけることで、根本的な問題点(制約条件)を
見つけ出す方法。
2)雲(対立解消図):「何に変えるか?」に対応。
根本的な問題が解消されないのは、矛盾や対立(コンフリクト)が存在するためである。矛盾や対立
(コンフリクト)を解消するための手法である。
3)未来問題構造ツリー:「何に変えるか?」に対応。
ブレイクスルーを実行するとどうなるか解決策を検証していくと同時に、 解決策を実行するに当たって発生
する新たな障害(ネガティブ・ブランチ) を発見・検証する。
4)ネガティブブランチ:副次的なツールである。
雲を使って見つけたブレイクスルーを実行した場合に、新たに発生する障害を予め予想し、その対策案を
実行する事で問題発生を未然に防ぐことが可能となる。
5)前提条件ツリー:「どの様にして変えるのか?」に対応する。
ネガティブ・ブランチで予想された障害とそれを解決するための中間目標を明確にする。中間目標に関して
は、時間的な順序関係が重要となってくる。
6)移行ツリー: 実行計画(行動計画)に対応する。
中間目標を設定することにより実行過程での中間の実体を明確にし、次に何をやらなければならないか、
行動を明確にしていく。また、進捗状況が明確になる。
当研究所では、思考プロセスをベースに、テーマに基づいた方法を組み入れることで有効な管理方法を提案します。